ペペローネのコラム2~サービス業として~

雨に打たれる紫陽花を何気なく見ていました。
淡い紫とほんの少しピンクの花が混ざっていました。
紫陽花は植わっている所の土によってつける花の色が決まると聞いたことを思い出しました。

私どもの飲食業も、地域とそこに住む人という土壌がありその上で成り立っているわけです。
私は白い花しか咲かない土壌に赤い花を咲かせようと20年もやっているのでは?と自問自答した.
今は20年前とは変わり赤い花がちらほら咲く可能性のある土壌になっていると思うのですが、咲かせるための努力なしに、咲くとは思えません。結果なにも咲かないかも知れないし、各色が少しずつ咲くのかもしれないけれど可能性を信じて現実離れしないでやれることをやっていくしかないと、いつもと同じ処にたどり付いてしまった。

またサービス業である以上、どれだけ多くのお客様がニノ・ペペローネに来ていただいて、食を通じ良い時間を過していただくことができたか、ということが最も大切なことで、そこの部分をおろそかにすると、自身過剰で気位ばかりが強い、若かりし自分のようになってしまい、思うようにいかない状況を自分以外の原因にしてしまいがちになる。
そうなると進歩は無くなりお客様との距離感がでてしまう。私は、できる事ならひとりひとりの味の好み、心身の健康状態などを把握した上で、よりお客様に近い距離で喜んでいただける仕事ができればもっと楽になると思っている。なので空気をよみつつ邪魔にならないようにお客様とは話をして好みなどを知っておくように心がけている。
ただイカ墨の料理にグラニュー糖をを求められたり、ボンゴレとかペスカトーレといった魚介類のパスタにおろしたチーズを求められたり、といったケースに関しては、次回お好みが解っていても求められるまではお出ししないようにはしています。ただ単に具がアサリというだけでエキス分のすくないボンゴレやトマトソース味の中に魚介類が入っているだけといったペスカトーレなら好みでチーズをかけてもさしたる問題ではないだろうが、うちのは蟹や野菜で手間をかけて採った出汁を使っているので、それがチーズで台無しになってしまう、魚介類にチーズは特殊なケースを除き使わないのが原則。
でもお客様に求められれば出汁がもったいなかろうが、うちの味では無くなろうが、お出しいたします。だからといってそのお客さまに対しある種のマイナスイメージは持つべきではなく、それはそれで尊重しなければならない事と考えます。

だだ、隣でボンゴレをたべようとしているお連れの方にもチーズを勧めるのは、隣の人まで自分の味にしてしまう行為で,このような魚介類にチーズといったような特殊な好みの場合は特にやるべきではない事、それぞれの味の好みが尊重されるべきように隣の人は本人が決めればよい事でしょう。しかしそれぞれのお客様の好みによって、私ががっかりしようが喜ぼうが、そんな事はこちらの都合にしかすぎず、ニノ・ペペローネに来ていただいたお客様が、楽しく良い時間を過してもらうという目的には関係がない事で、この考えかたが逆になってしまうとそれはサービス業本来の心を失っていると言わざるを得ないでしょう。
でも最近そういうことがわからない芸術家気取りの料理人が多すぎるように思う。我々もおだてられたり酷評されたりということにまどわされず、あるべき姿を確認して行かなければならない。お客様がたもどうか溢れる情報や無責任な評価に惑わされず、ご自身の尺度で本当のことを見抜いていただきたいと願っています。それが地域の飲食店の質の向上や本当の意味での良心的な店が、廃業しなくてもすむような土壌を育てて行くことになると思っています。つまらない土壌にならないようにどうかよろしくお願いいたします。
ニノ・ペペローネもまだまだ改善しなくてはならない部分が多いのですが、ひとつずつクリアーしてトラットリアとしてトータルなレベルの向上に努めていこうと思っています。

2000/7